イベントレポートVol.2  「CEATEC2024」

最先端のIT(情報技術)を使った製品やサービスを紹介する国内最大級の展示会「CEATEC(シーテック)2024」が2024年10月15日から18日まで千葉市の幕張メッセで開催されました。「Innovation for All」を開催テーマに掲げ、電機メーカーや電子部品メーカー、大学、地方公共団体など808社・団体が出展。AIや半導体、DXなどをテーマにした講演やパネルディスカッションも実施され、企業をはじめ研究機関、国、地方公共団体関係者ら約400人が登壇しました。4日間の会期中に約11万2,000人が来場しました。

CEATEC2024の様子

「AI for All」 社会課題解決をAI技術で

今年の目玉となる特別企画の展示エリアは、AI(人工知能)に焦点をあてた「AI for All」。日本を代表する研究機関や企業が、最先端のAI技術を展示しました。また、会場全体の出展者の約半数がAI分野の技術を披露し、スポーツのテクニック分析から、防災や健康など生活向上につながるAIまで多彩な分野での活用が紹介され、未来の社会や暮らしを垣間見せるような展示の数々に来場者からは感嘆の声が上がっていました。

地方公共団体などでの実装を目指す、社会課題解決に向けたAIも数多く出展されました。

「株式会社日立製作所」は、さまざまな相談窓口でジャンル問わず利用できるAIチャットボットを紹介。AIを活用した相談業務の支援ソリューションとして、人に相談しづらい生活の疑問に答えるAIチャットボットのほか、相談者の困りごとに応じた支援制度や過去の類似事例を相談員にガイド表示するAIなどを展示しました。AIにベテラン相談員のやりとりを学習させることで、経験の浅い相談員でもベテランのように、相談者に寄り添いながらも効率的に窓口業務ができるようにする狙いがあるとしています。

AIを活用した相談支援ソリューションを展示する日立製作所のブースの様子
日立製作所は、AIを活用した相談支援ソリューションを展示

「日本電気株式会社(NEC)」は、AIがドライブレコーダーの映像を分析して、交通事故の状況をテキスト化して報告書を作るシステムを展示。このほか、顔にスマートフォンのカメラを10秒ほどかざすだけで、脈拍や血中酸素など健康状態がわかる開発中の技術も紹介しました。この技術については、地方公共団体関係者から「健康相談などに利用できる」と、反響があったといいます。

テーマ別に先進技術への取り組みを展示するNECのブースの様子
NECは、「Well-being向上」などテーマ別に先進技術への取り組みを展示

400人登壇 地域の課題やDX事例など熱く語る

また、会場内に設けられた特設ステージなどでは、計203の講演やパネルディスカッションが行われ、最前線で活躍する業界のリーダーや専門家ら約400人が登壇しました。

デジタルの力で地方の社会課題解決と魅力向上を目指す「デジタル田園都市国家構想」をテーマにした、地域社会の未来を展望するパネルディスカッションも開かれ、一連のパネルディスカッションの中では、地方公共団体のフロントヤード改革(窓口改革)や、デジタル人材の育成、地域社会の課題解決を目指すDXなどをテーマにしたセッションも行われました。そのなかで、総務省情報流通行政局地域通信振興課デジタル経済推進室の八代将成室長は、「どこの地方公共団体でも人口減や働き手不足などが進んでいるほか、地域特有の課題が多岐にわたっている」とし、老朽化したインフラの点検にAIを導入して省力化する取り組みなど具体的な事例を紹介しながら、地域が抱える課題をDXの力で解決していく地域社会DXの有用性を説明。そうした各地の取り組みを紹介する総務省のサイト「地域社会DXナビ(本サイト)」が2024年10月11日に開設されたことにも触れ、「各地域で取り組まれたDXの成功事例を紹介しているだけでなく、これからDXに取り組む際のポイントなどについても分析調査し、情報支援として提供する。地域社会DXについて、知りたい情報はここで全部そろうという形にしていきたい」と話しました。

地域社会DXナビが紹介された際の様子
地域課題をデジタルの力で解決し、より暮らしやすい世の中にしていく取り組みとして地域社会DXナビが紹介された

地域DX実践者が出展「パートナーズパーク」

「パートナーズパーク」と名付けられた主催者特別企画のエリアには、地域DXに取り組む企業や地方公共団体などが集められたデジタル田園都市国家構想特設パビリオンのほか、地元企業などでつくる各地のDX推進機構が参加する情報処理推進機構のブース、海洋DXパビリオンなどが設置されました。また、2024年10月11日にオープンした本サイトを紹介するブースも設けられ、サイトの説明に耳を傾ける来場者でにぎわいました。

地域DXの取り組みとして、「CEATEC AWARD 2024」の「コ・クリエイション(共創)部門賞」を受賞した「エゾウィン株式会社」(北海道標津町)の農作業管理システム「Reposaku (レポサク)」を紹介するブースも登場。

エゾウィンのブースで「Reposaku」を説明する様子
エゾウィンのブースで「Reposaku」を説明

高精度の全地球測位システム(GPS)を搭載した端末を、農機具などに装着することで走行軌跡を誤差12㎝以内という高精度かつリアルタイムで作業の進捗状況を共有・記録するシステムで、北海道などの農業法人で導入され、事務作業にかかる時間が58%削減されたといいます。ごみ収集車や除雪車、バスなどでの活用も期待されているそうで、同社の大野宏CEOは「データを共有することでチーム全体の仕事が見えて、作業効率が上がりますし、GX(グリーン・トランスフォーメーション)にもつながります。将来は全自動化した無人農場を作りたいです」と話していました。

海洋DX 水中ロボット操縦体験など盛況

大きな水槽が来場者の目を引いた海洋DXパビリオンも、出展者による様々な実演が行われ、盛況を博しました。「株式会社未来創造部」(静岡県熱海市)は、3Dプリンターで作った水中ロボット(ROV)を来場者に実際に操縦体験をしてもらい注目を集めました。

水中ロボットの操縦体験の様子
来場者(左)が水中ロボットの操縦を体験。映像はリアルタイムでパソコン(中央手前)に

同社は熱海市とともに、海藻・海草に二酸化炭素(CO2)を回収・吸収させて海洋内に蓄積する「ブルーカーボン」創出に取り組んでいます。展示したROVは、その藻場の調査などに使うもので水深100メートル程度まで潜って撮影し、その撮影データを地上のパソコンに送れる仕組みだといいます。熱海市が目指す「2050年に二酸化炭素排出量を実質ゼロにする『ゼロカーボンシティ』」に向けて、取り組みを進めていく計画だといいます。

「直接触れた新技術を施策に生かしたい」

会場を訪れた九州地方の地方公共団体の男性職員は、「名だたる大企業から勢いのあるスタートアップまでそろい、会場を歩くだけで最新の技術動向がひとめでわかります。市民の方々にとって役に立つかを考えながら施策に新しい技術を取り入れていきたいです」と語りました。また、都内の地方公共団体の職員は「展示会のスケールの大きさに圧倒されました。AIをはじめ最新の技術に直接、触れることができ、施策にどんな形で生かすことができるかを考えています」と刺激を受けた様子でした。

「CEATEC 2025」 2025年10月開催予定

CEATECは「一般社団法人電子情報技術産業協会」(JEITA)が主催し、参加登録をすれば一般入場も可能です。次回、「CEATEC 2025」は、2025年10月14日(火)~17日(金)の開催を予定しています。

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