無線通信技術vol.3 主な技術の特長と活用事例を知ろう!(後編)
無線通信技術vol.3 主な技術の特長と活用事例を知ろう!(後編)
各地域が抱える地域特有の課題を、デジタルの力で解決・改善することが「地域社会DX」です。
地域社会DXを支える主な無線通信技術の種類と、どれを選べば良いのかを考えるためのヒントについての3回目は、今後の活用が期待される新しい技術を中心に紹介する後編となります。
LPWA(ロー・パワー・ワイド・エリア)
名前のとおり低消費電力で、比較的広いエリアをカバーできる無線通信技術で、最長15 km程度の距離で数十kbps程度の通信を行うことが可能です。通信速度はそれほど速くないため、動画よりも、温度管理など農水産工業のセンシングの用途でデータを送受信するのに適しています。無線局の免許・登録が必要ない「アンライセンスバンド」に関しては、数万円程度の費用で基地局を開設できたり、一般的な電池で数年の使用が可能であったりするため、IoT(モノのインターネット)分野での活用が期待されており、実際に線路や街灯の管理、鳥獣被害対策などさまざまな分野で活用されています。整備が比較的容易である反面、カバーしたいエリアを含めて十分な事前検討を行い、手戻りのない導入を心がけることが重要です。最近では、小容量の動画伝送などにも対応できる新しい通信規格「Wi-Fi HaLow」も登場していますが、こちらは別項目で取り上げます。
Wi-Fi6/6E、Wi-Fi7
元々は無線LAN(Local Area Network:構内通信ネットワーク)機器のうち、業界団体Wi-Fi Allianceの認証機器をWi-Fiと呼んでいましたが、この呼称が定着して、現在は無線LAN全般を「Wi-Fi」と呼ぶことが多くなっています。Wi-Fiの後ろにつく数字は規格の世代を表しており、半径数十mほどの比較的狭い範囲で強みを発揮するため、屋内での利用が普及しています。世代が進むにつれ通信速度も向上。近年登場しているWi-Fi6/6E、Wi-Fi7は、理論上の最大通信速度がそれぞれ9.6Gbps、46Gbpと、高速通信ができるのが特長で、セキュリティも向上しています。カバー可能な範囲を反映して、住宅やオフィス内などの屋内、公衆Wi-Fi、近距離での通信での利用が一般的です。価格も比較的安価で免許も不要ですが、Wi-Fi機器までのネットワークが必要で、また、端末側もWi-Fiの規格に対応している必要があります。
Wi-Fi HaLow(ワイファイ ヘイロー)
Wi-Fiの標準規格に基づいていますが、低消費電力・広エリアのLPWA(ローパワー・ワイドエリア)です。最高通信速度は数Mbpsで、Wi-Fiのように画像や映像が伝送でき、かつLPWAのような低消費電力で広範囲(最大1km)をカバーできるのが特長です。ただ、送信時間を1時間で計6分以下にするという制限があるため、リアルタイムで映像やデータを送信することはできませんが、送信間隔を調整しながら小容量の映像やデータを定期的に送ることは可能です。通信距離の長さを生かしつつ、IoT分野での活用が期待されています。
衛星通信サービス
非地上系ネットワーク(NTN)のうちの人工衛星を利用した通信サービスで、地上系ネットワークに頼らずにインターネットにつながることができます。このため、通信網が整備されていない地域や海上のほか、災害などで通信手段が絶たれた場所での非常時の通信手段として活用されています。100Mbps以上の通信が可能なものも登場しており、高速衛星通信「StarLink」、イリジウムやインマルサットといった種類があります。種類や用途によっても異なりますが、契約料金やハードウェア費用といった初期費用が端末1局あたり数万~数十万円ほど、月額利用料数千円~数万円ほどのコストが必要になります。