2
住民生活

生活情報を満載「若葉台アプリ」で団地みんな安心・快適

横浜市旭区

団地住民向けサービス開始 健康管理や医療相談も

総務省の事業を活用してスマートシティ化に取り組んでいる「横浜若葉台団地」(横浜市旭区)で、「若葉台アプリ」のサービス開始イベントが開かれ、事業に参画する企業・団体、住民代表をはじめ、総務省の古川直季大臣政務官、旭区の権藤由紀子区長らが参加しました。若葉台アプリのサービスは、総務省の「令和6年度地域課題解決のためのスマートシティ推進事業」に選定された8件のうちの「都市OS・サービス自治体共同利用モデルの構築」として実施されたもので、セレモニーの後にはサービスの体験会も行われました。

サービス開始セレモニーで関係者がテープカットしている様子
サービス開始セレモニーで関係者がテープカット

役立つ情報を配信、遠隔医療サービスも

「若葉台アプリ」の画面
「若葉台アプリ」の画面

「若葉台アプリ」は、横浜若葉台団地の住民向けスマートフォン(スマホ)の地域ポータルアプリケーション(アプリ)です。地域のイベントや生活情報の確認、歩数や消費カロリー表示による健康管理ができるなど便利なサービスが搭載されています。防災情報は、防災マップやハザードマップが確認できるほか、非常時には避難所など防災に関する情報が配信されます。また、生成AIを導入し、「AI相談」の機能も入れました。アプリの目玉としては、24時間365日受け付けてもらえる専門医による遠隔医療相談、女性向け経理スクールのオンライン授業が用意されました。サービスの内容は今後、住民の声を取り入れて拡充していくといいます。

高齢者も子育て世代も便利 全国の先進モデルに

説明を受ける様子

サービス開始イベントでは、まず古川総務大臣政務官が挨拶で、「今回の取り組みは、若葉台団地の地域特性を生かした先進的な街づくりとして日本中から注目されています。日常生活をより便利、快適にするだけではなく、高齢者や子育て世代を含む全ての方々が安心して利用できる『誰一人取り残されない』スマートシティの実現に向けた重要な一歩となるものです。モデルケースとして全国での課題解決につながることを期待しています」と話しました。続いて事業主体の「一般社団法人コンパクトスマートシティプラットフォーム協議会」の江川将偉代表理事は「若葉台団地については事業投資をしながら、全国の先行モデルとして作っていきたい思いがあり、いろんな企業にご協力いただき、総務省の補助金もいただき、みなさんのご協力のもとで作っています。高齢化において何をしたらいいか議論する中で今回のサービス実装に至りました。サービスは始まったばかりなので、改善しながら地域作りのために一つずつ乗り越えていきたいと思っています」と挨拶しました。来賓として、権藤区長、横浜市デジタル統括本部の福田次郎担当部長、「認定NPO法人若葉台」の白岩正明理事長、若葉台連合自治会の菅尾貞登会長がそれぞれ挨拶を述べました。

スマートシティ化で地域課題を解決へ

神奈川県住宅供給公社が開発した横浜若葉台団地は1979年に入居が始まりました。自然豊かな丘陵地に開発された高層団地群は、現在のタワーマンションのような人気があり、地域を活性化する様々なイベントも開かれてきました。ただ、入居開始から45年以上が経過し、住民の高齢化率は約55%、75歳以上の後期高齢者の比率も約35%に達しています(2024年9月)。今後も高齢化が進んでいく団地の課題をデジタルの力で解決しようと、2023年度に総務省の「地域課題解決のためのスマートシティ推進事業」を活用した取り組みが始まりました。スマートシティ分野の技術を提供する企業、スマートシティを推進する地方公共団体などで構成する同協議会が主体となり、様々なサービスを導入。坂道の多い団地内を移動するため最高時速6kmの電動カート「JOY cart(ジョイカート)」を住民が使えるようにしたほか、位置情報をスマホのアプリなどで確認できる見守り端末を配りました。また、必要な情報を音声で入手できる画面付きスマートスピーカー「アマゾンエコー」、防災情報や天気、電車の運行状況といった生活情報をテレビの画面と音声で知らせる「テレビ・プッシュ」サービスも、希望する家庭に提供されています。今回のアプリサービス開始もその一環で、新たに遠隔医療相談、経理スクールのオンライン授業の両サービスが導入されたのです。

「誰一人取り残さない、いい社会、いい地域に」

サービス開始イベントでは、同協議会の江川代表理事がこうしたアプリサービスの内容や仕組みについて説明しました。今回、新サービスとしてアプリに取り入れられた遠隔医療サービスは「株式会社Medifellow」が海外駐在員向けに展開しているサービスです。500人以上の専門医体制を構築しており、24時間365日対応です。医療機関を受診すべきか、どの診療科を受診するかといったアドバイスが受けられるほか、近隣医療機関への紹介状を作成してくれます。利用する住民が費用をそれぞれ負担する形で、利用料は月額1,100円(税込)(初月無料)です。

サービスや事業について説明する江川代表理事
サービスや事業について説明する江川代表理事(左)

オンラインの経理スクールは、「株式会社Cuel」の女性向けサービスで、レベル別の授業のほか、受講者同士で気兼ねなくやりとりができるコミュニティーがあるのも特徴です。子育てをする女性の経理分野での活躍、キャリアアップを支援することで、子育て世代も住みやすい団地を目指します。通常は月額16,500円の授業料は、先着50人分を同協議会と株式会社Cuelが負担することで無料としました。江川代表理事は「会計の専門家がいろいろアドバイスしてくれるし、コミュニティーに入って会計の相談も子育ての話もできます。就職支援により、リモートワークや家での副業など、子どもから目を離さずにできる仕事につなげていく手助けもできるのがポイントです」と説明しました。

説明員から説明を受ける政務官
説明を受ける政務官

体験会では、参加者たちが各サービスの説明を受けながら、試行していました。各サービスを体験した古川総務大臣政務官は印象に残ったサービスとして、スマホが使えない人でもテレビで情報を入手できる「テレビ・プッシュ」を挙げました。遠隔医療相談については、「すぐに医師とつながり、画像も以前と比べて高画質。遠隔医療を実際に試した人は少ないと思いますが、今回登録される方は多いのではないかと思いました」と述べ、全体の印象としては「これらのサービスが普及すると、人と人がつながり、独り暮らしの高齢者も孤立しない『誰一人取り残さない』いい社会、いい地域になるのではないかと思いました。ITに振り回されるのではなく、しっかり活用すべきと改めて思いました」と話しました。

デジタルはコピペで安価に横展開しやすい

同協議会の江川代表理事は「いろいろなサービスを住民に届けていきますが、今後は自走することを目指しており、受益者負担で住民に使ったサービス分を支払っていただき、企業が得た収益の一部を認定NPO法人若葉台に還元していくことを考えています。住民が使うお金が、地域の課題を解決するためのお金に変わっていくモデル作りをやっていきたい。デジタルはコピー&ペーストで横展開を安価にできる利点があります。若葉台団地で育んだものを横浜市全体、神奈川県全域、他の地域でも使ってもらうようにしていきたいと思います」と目標を掲げました。

関連記事