デジタル分野協力隊員活躍 ゴミ分別、農業支える発明 ウェブで「関係人口」創出

引用元:読売新聞オンライン

 全国最多の地域おこし協力隊員を抱える道内で、デジタルやIT技術にたけた隊員が活躍している。暮らしのサポートや人口減少対策に知見が生かされており、専門人材を募集する自治体も出てきた。(柳沼晃太朗)

地域おこし協力隊員の鈴木さんの写真
農業用のセンサー機器など多くの「発明」を手がけてきた、
地域おこし協力隊員の鈴木さん(栗山町で)

 栗山町の協力隊員・鈴木敦文さん(27)は大学で機械工学を学び、卒業後は出身地の神奈川県内のIT企業などで働いていた。地域で様々な人と関わりながらものづくりに携わりたいと町の隊員募集に申し込み、2021年10月に活動を始めた。

 町中心部にある工房「ファブラボ栗山」で3Dプリンターやレーザー加工機の使い方を住民らに教えるインストラクターを務めながら、暮らしや産業を支える「発明」もしている。ゴミの分別種類が多い町で、カメラの画像認識機能やAI(人工知能)を使ってゴミを仕分け、指定のゴミ箱に入れる装置を製作。農家と協力し、ビニールハウスの湿度などをセンサーで把握する機器も手がけた。

 鈴木さんは「地域の課題解決につなげたいと取り組んできたが、様々なつながりが生まれて自分自身も成長できた」と振り返る。

 総務省によると、道内で23年度に地域おこし協力隊として活動したのは全国最多の1084人。1次産業や観光振興にとどまらず、地域通貨のシステム運用や住民向けスマートフォン教室の講師、自治体のユーチューブチャンネル運営など近年はデジタル分野での活躍も目立っている。

 行政手続きのオンライン化や役場内でのAI活用など、DX(デジタルトランスフォーメーション)に力を入れる自治体からの引き合いもある。羽幌町は今年度、業務効率化や町民のデジタル関連の相談対応などを担う隊員を募集。デジタル推進課の竹内雅彦課長は「町はDXに本腰を入れはじめたばかり。レベルを引き上げてくれる人に、力になってほしい」と話す。

 道は、庁内にいるNTT東日本の社員に協力隊員がデジタル関連の相談をできるようにするなど支援体制を強化している。

hiroさんの写真
デジタルコミュニティーを活用した関係人口創出に取り組む
hiroさん(余市町で)

 隊員が持つ知見を人口減少対策に生かす自治体もある。余市町は今年4月、札幌市のスタートアップ(新興企業)「あるやうむ」と協力し、デジタルコミュニティーを利用して、特定の地域と関わり続ける「関係人口」創出を狙う取り組み「地域おこし協力隊DAO(ダオ)」を始めた。

 ダオはウェブ上のコミュニティーでメンバーが意思決定をしたり、地域活性化のアイデアを出し合ったりする手法で、町は世界最大級といわれる「Nouns(ナウンズ)」の国内メンバー・hiroさんを隊員に任命した。hiroさんは町のコミュニティーを運営し、情報発信や地域活性化のアイデア募集などを行っている。

 町名産の果物をデザインしたデジタルアートのオンライン講座や有志が実際に町を訪れて海岸を清掃するなど、ウェブ上でも現実空間でも交流が活発化。父の別荘が町内にあり、子どもの頃から親しんだ地域での活動にhiroさんは「自然豊かな余市のすばらしさを、自分の得意な形で全国や世界に発信したい」と意気込んでいる。

引用元:読売新聞オンライン

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